読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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読んだ本の感想をまとめています。
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#307 法月綸太郎『ふたたび赤い悪夢』

ふたたび赤い悪夢
著 者:法月綸太郎
出版社:講談社文庫
発行日:1995年06月15日

 


内容(Bookデータベースより引用):
法月綸太郎のもとに深夜かかってきた電話。救いを求めてきたのはあのアイドル歌手畠中有里奈だった。ラジオ局の一室で刺されたはずの自分は無傷で、刺した男が死体で発見される。恐怖と混乱に溢れた悪夢の一夜に耐えきれず、法月父子に助けを願い出た。百鬼夜行のアイドル業界で“少女に何が起こったか”。


所感:
『頼子のために』のその後。

作家、法月綸太郎は苦悩していた。
いや、探偵、法月綸太郎か。
うーん。職業に関係なくとにかく、法月綸太郎は悩んでいた。
『頼子のために』の結末に。


しかしその幕引きは、綸太郎が自ら結論を下した結果。
ならばその後味の悪さもそこから派生する悪夢も
きちんと引き受けなさいよ!!!と叱咤激励したくなる。
のりりんはナイーブすぎるのだ。
ちなみに英語でnaïveは誉め言葉には当たらない。
そしてわたしが「のりりん」を形容する「ナイーブ」も
誉め言葉ではない。

そんなうだうだしている「のりりん」の元に
助けを求めてきたアイドルの畠中有里奈。
正確には、「のりりん」にではなく、
お父さんの法月警視になのだけれど。
有里奈と法月警視は『雪密室』で知り合っているのだ。


有里奈が言うには、
ラジオ局の一室でナイフで刺された気を失ったはずが、
自分は無傷。
しかもその刺した犯人が死体で見つかったとのこと。
夢遊病のように無意識のうちに凶行に及んでしまったのか…
と恐れる有里奈。

マスコミが騒ぐ中、
法月警視と「のりりん」は有里奈を匿うことにする…。


相変わらず、ストーリーは「面白い」のひとことに尽きる。
良く練られたプロットと伏線。
その回収のそつのなさ。
読んでいて快感さえ覚える。

が。
この作品の大きなテーマはミステリ部分とは別のところ。
心に傷を負った法月綸太郎の再生だ。
そして過去に傷を持つ有里奈の再生でもある。

先にも書いたように、
ナイーブ過ぎる「のりりん」にはイライラしたのだけれど、
ラストはうまくまとまるので…まぁ、いっか(笑)。


なんやかんや言って「のりりん」ファンなのであります。






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2014年12月12日| コメント:0トラックバック:0Edit

#306 連城三紀彦『白光』

白光
著者:連城三紀彦
出版社:光文社文庫
初 版:1992年12月20日




内容(裏表紙より引用):
ごく普通のありきたりな家庭。夫がいて娘がいて、いたって平凡な日常―のはずだった。しかし、ある暑い夏の日、まだ幼い姪が自宅で何者かに殺害され庭に埋められてしまう。この殺人事件をきっかけに、次々に明らかになっていく家族の崩壊、衝撃の事実。殺害動機は家族全員に存在していた。真犯人はいったい誰なのか?連城ミステリーの最高傑作がここに。


所感:
ごくありきたりな一家の庭で発見された幼女の遺体。
これだけ取り上げれば先日読んだ『赤い指』に通じるものを感じるが
『赤い指』と本作は全く非なるものである。

『赤い指』にて遺体で見つかった少女は
その家の人間と血縁関係はなく、
ストーリーの焦点は阿呆息子が犯した殺人を隠ぺいすることにある。

しかし本作では殺害された少女は彼女が遺体で発見された家の血縁者。
そしてその家では少女の殺害の隠蔽は行われず、
4歳で殺害された女の子に対する殺害動機及び
そこから浮かび上がる複雑な人間関係と
心理に焦点があてられている。

作品を読み進めていくうちにわかってくるのだが驚くことに、
この一家の誰もが女の子を殺害する動機を持っている。

女の子の母親、父親、母親の姉、その姉の夫、夫の父、その姉夫婦の娘…
その誰もにたった4歳の女の子を殺害する動機があり、
間接的または直接関に機会があった。

果たして幼女殺害の真犯人は誰なのか…。
その真犯人が気になるところではあるのだが、
それよりも何よりも注目せざるを得ないのは、
これだけの人間が4歳の女の子に対して
殺害動機をもっていることそのものだ。

たった4歳の女の子に対してこれだけの数の人間が
「殺したい」、あるいは「死ねばいいのに」と思うことがあるのだろうか。

当然の疑問だ。

端的に言って、この殺された女の子自身は何も悪くなく、何の罪もない。
しかし周りの人間は彼女を「殺したい」または彼女に「死んでほしい」と思っている。

その殺害動機の背景にはこの家に隠された複雑な事情が絡んでいるのだが、
詳しく書くとネタばれになるので書かないでおく。

ストーリーは、この一家全員による「語り部リレー」により進んでいく。
それぞれが見えている部分、推測する部分が少しずつ重なって
最後の最後にはすべての真実が読者の前に現れるのだけれど、
それまでの過程がなんともいえないほど息苦しい。

一人の幼女が殺害されたのだから重苦しくて当たり前なのだが、
語り部たちの内面心理が描写されることにより、
一層重苦しさが増していく。

残念ながら最後まで辿り着いても「救い」は何もなく、
一筋の光さえも見えない。

そしてなぜ少女が死なねばならなかったのかさえも…
明かされはするけれど、
わたしにはとうてい理解できない。

しかし驚くことに読後感は悪くはない。
決して良くもないのだけれど、
陰鬱な事件の割には後を引く心地悪さがほとんどない。

殺された幼女に対して真犯人もそれ以外の人物も、
誰もが後悔を感じ詫びるべきで
実際に作中では誰もが後悔や懺悔をしていて、
その心理描写がこの作品の核ではあろうことはわかるのだけれど、
結局のところすべての元凶はたった一人の人物にあるのではないか、
と思うのはわたしだけだろうか。




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2014年12月11日| コメント:0トラックバック:0Edit

#305 高村光太郎『智恵子抄』

智恵子抄
著者:高村光太郎(中村稔編)
出版社:角川文庫
初 版:1999年01月25日


智恵子抄 角川文庫 / 高村光太郎 【文庫】

智恵子抄 角川文庫 / 高村光太郎 【文庫】
価格:637円(税込、送料別)



内容(裏表紙から引用):
<『智恵子抄』は特異な詩集である。構成が特異なだけではない。彼らの愛のかたちが特異であり、その悲劇的な愛の美しさにおいて特異である。私たちに高村光太郎と智恵子が彼らの生を賭して遺してくれあ貴重な遺産である。>(解説:中村 稔)
『智恵子抄』初版・全、同補遺、同以後の三部構成によって、光太郎生前の意図を出来る限り忠実に再現しながら、智恵子に関する詩文を完全収録した永遠の名詩集。待望の文庫化決定版!


所 感: 
『智恵子抄』というのを耳にされたことはあるだろうか。

『智恵子抄』とは
「僕の前に/道はない/僕の後ろに/道は出来る」で始まる『道程』という詩で
有名になった萩原朔太郎が30年間に渡って妻・智恵子について書いた作品である。
収録されている短歌、三文、詩の全てが智恵子一色。
まさしく『THE・智恵子』な作品だ。

『智恵子抄』に書かれた30年とは1911年から1941年のことである。

1911年は光太郎と智恵子が出会った年。
1913年、ふたりは結婚。

結婚後、父の死や実家の破産、離散といった悲しみが智恵子を襲う。
もともと病気がちだった智恵子は1931年に統合失調症を発症、
翌年には自殺未遂を起こす。

そしてその自殺未遂から3年後の1935年秋、肺結核により死亡する。
享年52歳。

彼女が生前放った言葉の中で最も知られていうのは
『あどけない話』の冒頭にある
「智恵子は東京には空がないといふ」だろう。

ちなみに友人は「そうは言っても東京にはモノがある」と言っていた。
それはわたしもそう思う。
でも、智恵子が生きた時代は今とは全く違う…。

智恵子と出会ってから智恵子について書き続けた朔太郎は
智恵子が死んでも尚、智恵子について書くことを止めなかった。
そしてそれら智恵子についての作品が収められているのが『智恵子抄』である。

現在、手に取ることができる『智恵子抄』(文庫)はおそらく二冊だけ(わたし調べ)。
ご紹介している角川版と、もうひとつは新潮社から発行されている。

この二冊は同じようでいて実は大きな違いがある。
裏表紙にあるように本作には『智恵子抄』の「初版」と「補遺」と「以後」が収められている。

「初版」に収められている詩は29編。
この29編と短歌とエッセイを少しばかりをまとめて「初版」というようだ。
これが新潮版の『智恵子抄』。

しかし本作には加えて「補遺」と「以後」が収められているため、
全部で40編近い詩が詰まっている。

「だからどうなのだ」と言われたら…
確かにどうってことはないかもしれないけれど、
わたしは「以後」に収められている詩が結構好きだったりする。
もちろん有名な『あどけない話』『レモン哀歌』が収められているのは「初版」。

だけれど…「補遺」や「以後」も案外よいな、と。
一歩間違えたら「ストーカー」に思われかねない
きわきわの心理に嫌悪感を抱くかと思っていたのだけれど、
それは間違いだった。

有名な詩は検索すれば出てくると思うので、
あまり知られていないと思われる詩を少し引用する。



値ひがたき智恵子(「初版」より)

(前略)
智恵子はくるしみの重さを今はすてて、
限りない荒漠の美意識圏にさまよひ出た。

わたしをよぶ声をしきりにきくが、
智恵子はもう人間界の切符を持たない。




報告(「以後」より)

日本はすつかり変わりました
あなたの身ぶるひする程いやがっていた
あの傍若無人のがさつな階級が
とにかく存在しないことになりました
すつかり変つたといつても
それは他力による変革で
(日本の再教育と人はいひます)
内からの爆発であなたのやうに
あんないきいきした新しい世界を
命にかけてしんから望んだ
さういう自力で得たのでないことが
あなたの前では恥かしい
(後略)



元素智恵子(「以後」より)

智恵子はすでに元素にかへつた。
わたくしは心霊独存の理を信じない。
智恵子はしかも実存する。
智恵子はわたくしの肉にいる。
智恵子はわたくしに密着し、
わたくしの細胞に燐火を燃やし、
わたくしと戯れ、
わたくしをたたき、
わたくしを老いぼれの餌食にさせない。
(後略)



あの頃(「以後」より)

人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
(略)
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無類のわたくしは初めて自己の位置を知つた。




読んでいて一番恥ずかしいというか…
赤面してしまいそうになったのは「初版」にある『僕等』という詩。

智恵子への光太郎の想いが伝わってきて、
冒頭部分がなんだかとっても恥ずかしい…。

でもとてもいい詩だと思う。



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2014年12月10日| コメント:0トラックバック:0Edit


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