ジョナさん著 者:片山優子
発行元:講談社文庫
発行日:2010年10月15日
内容(裏表紙より引用):
週日曜、死んだおじいちゃんの愛犬と公園へ行く。これが高校二年、チャコの習慣だ。しかしのどかな風景とは裏腹に頭の中は悩みでいっぱい。大学受験、親友との大喧嘩、そしてバラバラな家族。青春まっただ中って感じだけど当人は息苦しいことこの上ない。そしてさらにチャコは出逢ってしまう―恋に。
所感:
新聞の広告欄で興味を持って読んでみた。
ハジメマシテの作家さん。
淡い恋愛を読書で追体験しようと軽い気持ちで手に取ったのだけれど、まさかの号泣。
内容が心に響いて、というよりは、
「忘れていたこと」を内容に触発されて思いだしてしまったがための涙だ。
高校生の頃ってなんであんなに毎日笑っていたんだろう。
今になって思えば、ホント不思議だ。
毎日、くだらないことで一喜一憂していた。
でもその時は、そんな毎日が特別だなんて認識はまったくなくて、
こんな日々がずっと続いていくのだと何の疑いもなく思っていた。
振り返ってみても、青春だったな―って思う(笑)。
でも、その渦中にいる当人はそんなことを感じている余裕はないのだよね。
それは、10年経った今だから思えること。
余裕?!
悟り?!
達観?!
諦め?!
良いようにも悪いようにも言えるけれど、
良くも悪くももうわたしは「これぞ高校生」って感じの青春の中にはいられない。
女子高で体育教師をしていた(今は共学)友人(男性)が言ってた――
「動物園やで」ほんと、そうだと思う。
女子も男子も高校生って、
その時期を10年以上過ぎた人間からすれば動物園に近い。
でも、ちょっと羨ましくもある。
著者はあとがきで
「私はこの小説を、忘れないために書きました。」と言い切っている。
実際、高校の時の思い出なんて、けっこう忘れている。
でも、本書を読んで、そういえば…と、淡くてぼやけた記憶が蘇ってきた。
そしてなんだか嬉しくなった。
内容のことをほとんど触れていないけれど、
本書で描かれているのは本当に、
どこにでも転がっていそうな、女子高校生の日常だ。
特別感動するわけでも、驚くわけでもない。
小さくて狭い世界で起こることは、その世界でそはれなりの威力を持つ。
そしてそのそれなりの威力で彼女は笑って泣いて、感情を移ろわせる。
ただそれだのことなのだけれど…。
とっても好きだな、って思った。
ちなみにタイトルの『ジョサさん』については、読んだ人だけのお楽しみ。
『ジョナサン』ではなくて『ジョナさん』ってところがポイントだ。