夏期限定トロピカルパフェ事件
著者:米澤穂信
発行元:創元推理文庫
初 版:2006年04月14日
内容(裏表紙より引用):
小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?待望のシリーズ第二弾。
所感:
先に読んだシリーズ第一弾の
『春期限定いちごパフェ事件』が
予想を遥かに超えておもしろかったので、
すぐさま第二弾に手を伸ばしてしまった。
そして本書を読み終わった後、
手元に第三弾である『秋期限定栗きんとん事件』
を手元に
準備しておかなかったことを激しく後悔した。
高校二年生の夏休み。
互恵関係にある小佐内さんは小鳩くんを
<小佐内スイーツセレクション・夏>に誘う。
<小佐内スイーツセレクション・夏>とは、
スイーツに目がない小佐内さんが厳選した
「この夏に必ず食べなければいけないスイーツ」のリストである。
しかしこのお誘い、
小佐内さんと小鳩くんの間に結ばれた互恵契約には含まれていない。
しかし小市民である小鳩くん。
小佐内さんの「趣味」につきあうことはもちろん吝か(やぶさか)ではなく、
日々せっせと小佐内さんのスイーツ巡りに付き合うことに…
そんな微笑ましい夏休みに事件は起こる。
過去の苦い経験から、賢(さか)しく推理するという行為を封印した小鳩くん。
復讐心を忘れると誓った小佐内さん。
ふたりは小市民のままこの夏を越すことはできるのだろうか…
読み終わって思わず
「小佐内さーんっ!!!!」
と叫びたくなってしまった。
(読んだ方にはこの気持ち、わかるはず)
それほど小佐内さんに対する(からの?)衝撃がすさまじかったのだ。
どこが小市民なのーーーっ?と突っ込みたくなった方もおられよう。
しかし忘れてはならない。
小市民を目指している時点でその人はもう小市民ではないのだ。
そのことに小鳩くんも小佐内さんも気付いていないように思う。
おそらく小市民を目指すことに一生懸命過ぎて、
自ら「我々は小市民ではありません」と宣言していることに
思い至らないのだろう。
ちょっと胸が痛い。
あぁ、この後の展開が気になるっ!!!