読んだ本の感想をまとめています。 |
死神の精度
著 者: 伊坂幸太郎
発行元: 文春文庫
初 版: 2008年02月10日
【楽天ブックスなら送料無料】【2006年本屋大賞<3位>】死神の精度 [ 伊坂幸太郎 ] |
内 容(裏表紙から引用):
CDショップに入りびたり ②苗字が町や市の名前であり ③受け答えが微妙にずれていて ④素手で他人に触ろうとしない――そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。解説・沼野允義
所 感:
うん、面白いっ!
まるで小学生の感想だけれど、ほんとに面白かった。
本作の主役は死神の千葉。
死神の世界も組織化されていて千葉は調査部に所属している。
情報部から指定された「対象者」を七日間調査し、
「可」か「否」の判断を下すのが「調査部」員の仕事だ
。「可」の判断が下れば(大半は「可」なのだが)、
その対象者は八日目に死ぬ。
調査部員はその時々で姿を変え
(調査部員は調査のたびに、最も仕事のやりやすい外見と年齢に変身する)、
対象者の生活圏に入り、調査する
。調査方法は、各死神の裁量に委ねられており、
ろくに調査をせずに「可」とする者もいれば、
可能な限り対象者と接触するものもいたり、
と、十人十色だ。
千葉の場合はやるべきことはやるが、余計なことはやらない。
そのポリシーの下に、調査を進める。
そして本作には、千葉と彼の調査対象者となった六人の物語が収められている。
① 死神の精度
対象:22歳女性(メーカーの苦情処理係)
千葉:モデルのような外見の20代前半の青年
② 死神と藤田
対象:45歳男性(極道)
千葉:中年男性
③ 吹雪に死神
対象:中年~初老女性(開業医の妻)
千葉:姿勢のいい好青年
④ 恋愛で死神
対象:20代男性(ショップ店員)
千葉:25歳の青年
⑤ 旅路を死神
対象:人を刺し殺したばかりの青年
千葉30歳の会社員
⑥ 死神対老女
対象:老齢女性(美容師)
千葉:青年
どの物語でも千葉は対象者を調査し、
死を実行するかの可否を判断する。
よって、どの物語も「死」と切っても切れない。
しかし不思議なことに、「死」を大々的に扱っているのにも関わらず、
ほとんどのストーリーはあったかい。
それは、例えば千葉の発するトンチンカンな言葉
「吹雪を甘く見ると…」に対して発した千葉の発言。
「甘い?吹雪に味があるんですか?」
こういったユーモアだけによるものでなく、
とにかくあったかい気持ちになる。
しばらく伊坂作品から遠ざかっていたのだけれど、
また、手を伸ばしたくなってしまった。
それから『オーデュポンの祈り』だったかな・・・。
・・・なるほど、初期作品は少し不条理だったり、少し破綻していたり、回収しきれていない感じがあって、そこも魅力だったのかも知れない・・・。
上手くなりすぎたというか、初期ほど力まなくても書けるようになったというか・・・。
最近の伊坂作品にあまり魅力を感じないのは、そのあたりに一因があるのかも・・・。
と。
過去記事というのは、いろいろと考えさせてくれますね。
これはこれで面白いなぁ♪