怪しい人びと
著者:東野圭吾
発行元:光文社文庫
出版社:1998年06月20日
内容(裏表紙より引用): 俺は同僚の片岡のデートのために一晩部屋を貸してあげた。その後、そのことを片岡から聞いた2人の同僚、本田と中山にも部屋を貸すことになってしまう。3カ月後のある日、いつものように、車から部屋に戻ると、見知らぬ女が寝ていて…。(「寝ていた女」)あなたのそばにいる優しい人が、いつの間にか怪しい人びとに―。著者ならではの斬新なトリック満載の傑作推理集!
所感: 東野圭吾の短編を、初めて面白い」と思った!!
本書には前々から興味はあったのだけれど、
東野作品の単品(含む『探偵ガリレオ』)とはどうも相性が
すこぶる悪いらしく手を出せずにいた。
東野作品が決して読み難いわけではない。
短編はそうでもないけれど長編は一度読み始めたら最後、
ストーリーに引き込まれどんどん読み進めてしまうことが多い。
とても読みやすい作家だと思う。
しかし「読みやすさ」=「よい」ばかり、とは限らない。
特に短編は…サクサク読めるのはいいけれど、
物足りなさを感じることが多い。
短い頁数の中で起承転結だの山場だのオチだのをパシッと決めるのは、
至難の技だろう。
わたしは小説なんて書いたことがないのであくまでも想像だけれど、
長編よりも短編のほうが書くのは難しいのではないだろうか、と思う。
そしてこれまで読んだ東野短編に対する
感想は主に、「物足りない」。
または「何がなんだか…」。だった。
しかし本書。
冒頭で書いたとおり面白かったのだ!!!
作品タイトル通り収録各短編では「
怪しい人びと」が登場するのだけれど
、率直に言って、んなに怪しくはない。
「怪しい」というよりは「ブラック」要素が多い短編集と言ったほうが適切かもしれない。
そのブラックな部分がとっても好みだったので面白く感じたのだ。
しかししかしブラック故、好き嫌いが大きく分かれる作品集であるとも言える。
普段、短編集を読んでもその各収録作品のあらすじ(導入部分)を
書き記すことはないのだけれど、今回は書いてみようと思う――
と、確かに思ったのだけれど、解説の西上心太が
これでもかっていうほど上手く各あらすじをまとめてくれているので、
それを引用する。
(決して「手抜き」じゃないんです。ほんっと、見事なまとめっぷりなので、ね。)
『寝ていた女』 まるで映画の『アパートの鍵貸します』のようだ。ひょんなことから“俺”はデート用に自分の部屋を同僚に貸し出すようになってしまった。ある日部屋に戻ってみると、見知らぬ女がベッドに寝ていた。酔っていたため相手を覚えていず、しかも避妊せずにセックスをしてしまったという、昨夜の男を見つけてくれなければ帰らないというので“俺”は女の相手探しをするはめに……。
『もう一度コールしてくれ』 警官に追われ逃げ込んだ家は因縁のあるあいつの家だった。“俺”がいまのようなろくでなしの生活を送るようになったのも、あいつが下した“コール”が原因だ……。
『死んだら働けない』
密室状態の工場の休憩室で、本社の係長が頭を殴られたような傷を負って発見される。ロボット工作機械のアームによる事故と思われたが……。仕事熱心な性格が皮肉な結果を招来する……。
『甘いはずなのに』 新婚旅行中の“私”は、妻の首に手をかける。「君が宏子を殺したのか」。娘の宏子は一酸化炭素中毒で死亡していた。だが恐ろしい疑惑が“私”の脳裏を去らなかった。当時婚約中だった妻は、懐こうとしない前妻との子の宏子を事故に見せかけて殺したのではないのか……。
『灯台にて』 “僕”は古いアルバムを見ると十三年前の大学一年のときのことを思い出す。常に劣等感を感じていた幼なじみの佑介と、それぞれ東北へ逆ルートの旅をしたのだ。日本海に面した灯台に泊めてもらった“僕”は、そこで経験したある事実を伏せたまま佑介を灯台に赴かせる……。
『結婚報告』 級友から結婚を報告する手紙が智美の元に届いた。ところが同封された写真に写っていたカップルの女性は、全くの別人だった。智美は休暇を取り、友人の故郷・金沢に向かった。
『コスタリカの雨は冷たい』 会社員の“僕”は夫婦でコスタリカにバードウオッチングに出かけるが、かの地で強盗にあい、現金、パスポート、カメラなど身ぐるみを剥がされてしまう。だがウエストポーチから転がり出たカメラの電池を手がかりに、思わぬ推理が展開される。
と、導入部分を見ただけでも何やらちょっと怪しそう。
しかし先にも書いたとおり、それほど怪しくはない。
しかも、裏表紙には「斬新なトリック」とあるけれど、
トリック自体は取り立ててスポットを当てるほどでもない。
では何が「面白かった」かというと、やはり「ブラック」要素。
その「ブラック」の効いたヒネリあるラスト(オチ)が小気味良いのだ。
そしてそのオチがまた余韻を残していて…
どの短編も楽しく読むとともに、思わず「巧い!」と唸ってしまった。
現代の一大ベストセラー作家様に対しての感想としては失礼きわまりないのだけれど、
東野作品の雰囲気について「巧い!」と思うことはあっても、
構成に対して「巧い!」と思ったのはこれが初めてだ。
人にはなかなかお薦めできないのが残念だけれど、
私にとって、とっても楽しい短編集であることは間違いなし。
面白くて映画まで観たんだけど、活字は読んでなかった。
どうにも手を出せないでいたんだけど、意を決して読んだのが
この作品だったのよぉ~
で、同じく、読みやすくて面白かったのよぉ
で、会社の人に東野作品を4冊貰って
2冊読んだけど、mokko的に面白かった。
何が気に食わなくて読まなかったのか、今となっては
謎だけど、これは面白かったです(o^o^o)