#070 関口尚 『ムーン・ショット』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#070 関口尚 『ムーン・ショット』

ムーン・ショット
著 者: 関口尚
発行元: MF文庫ダ・ヴィンチ
初  版: 2008年8月25日






内 容: (裏表紙から引用)
大人にだって、青春はある

33歳の大和は仕事も順調、仲間と草野球も続け、何のふまんもない……はずだけど、10歳年下の彼女・沙耶がぶつけてくる幼いわがままに疲れ気味。そんな時、野球部のかつてのマドンナ・椿が帰ってきた。大和が想いを馳せるのは、とりそこねたボール、行けなかった甲子園、そして行方のわからないもう一人の親友・天光のことだった……。文庫書き下ろし。巻末エッセイは竹内真。


所 感:
15年前、大和、スズケン、徳ちゃん、天光は
県立高校野球部の「ろくでなしカルテット」と呼ばれていた。
大和はライト、スズケンはキャプテンでセカンド、
徳ちゃんはセンター、天光はピッチャーで四番だった。

県大会の決勝戦、天光は特大ホームランを打った。
結局試合には負けて甲子園出場は叶わなかったけれど、
みんな、その時の見事なホームランが忘れられない。


あれから15年。大和、スズケン、徳ちゃんの三人は
商店街の草野球チームで早朝野球をしている。

現在33歳になった大和はスーパーの統括マネージャー。
スズケンはバツ一の塾講師。
徳ちゃんは家業の不動産会社の次期社長。
(ちなみに強くて恐い奥さんと子どもがふたり)
天光は…高校卒業以来行方不明。
試合の後に開かれる「反省会」という飲み会で
決まって話題にのぼるのは天光のこと。


大和には10歳年下の彼女がいる。
名前は沙耶。
フリーターの沙耶はまだまだ幼くて、
理不尽で自己中な理屈を展開しては
「大和はわたしのことなんて大事じゃないんだ」と
、自分の要求ばかりを押しつけてくる。
大和は正直、そんな沙耶に辟易し始めている。


そんな折、野球部のマネージャーでアイドルだった椿が帰ってきた。
高校卒業後、電撃的に教師と結婚し離婚して、
東京に行った椿。
教師との間にもうけた子どもはもう14歳になっている。

高校卒業後、
それぞれの道を歩んでまた集まったかつての野球部メンバー。
それぞれがそれぞれの思いを抱え、自分の道を歩んでいく。


2時間くらいで一気読みしてしまった。


タイトルの「ムーン・ショット」とは、
「メジャーリーグにおいて、月をも打ち落とすような特大ホームラン」(本文より抜粋)のことだ。
大和もスズケンも徳ちゃんも、そして椿も、
15年前に天光が放ったムーン・ショットが忘れられない。


学生を卒業し職につくとついつい日々の忙しさに忙殺されて、
自分の時間を見いだせなくなることがある。

自宅と仕事の往復。
疲れているからついつい寝てしまう。

そんな自分に嫌気がさしたりして…。

そんな時、熱中できる趣味なんかが見つかると初めて、
「生きてる」って思える。
「生きがい」というと大げさだけど大切な何かは、
必要なのだと思う。

大和たちにとっての大切な何かは、野球だった。

昔の友だちに会うと、
自然と当時にタイムスリップしてついついはしゃいでしまう。
もう昔みたいには走れないのに、
100メートルを疾走できると信じて疑わない。

昔はああだった、こうだったといいながらお酒を飲むことは、
現実から目をそむけ過去にすがっている悲しい大人の性なのか。
いや、そうではないと信じたい。

33歳になった大和たちはもういい大人。
18歳の頃とは違いそれぞれの事情や悩みを抱えている。

大和にとっての最大の悩みは10歳年下の彼女、沙耶。
幼くてわがままで…読みながら、読んでるこっちが腹がたってきた。
「甘えてるんじゃない!」って言ってやりたいくらい(笑)。

「電話をくれないのはあたしを愛していないから」
「お金を貸してくれないのはあたしを愛していないから」
「大和はあたしのこと、好きじゃないから、会わなくても平気なんだ」

極めつけは
「あたしの前で、もう二度と高校時代の話はしないで」。

幼すぎるにもほどがある。
と、今にも切れそうになるのは私が大人げないからかもしれない。


スズケンは前の奥さんとの離婚原因になった
夕方から午前3時までの勤務という塾の講師という職業について悩んでいる。

徳ちゃんは、家業の跡取りとして、
これから果たさねばならない責任について。

椿の悩みは14歳の息子、民人のこと。
民人はプライドが高くひ弱で、
まわりとのコミュニケーションもうまくとれない。
自分に自信がないからだ。


野球を通してつながったみんな。
「天光は今頃どうしてるのだろう…」と考えながら
それぞれ違った悩みを持ち、
違った考えを持って、
違った道を歩いていく。

昔、学生でバイトをしていた頃、
「みんな一緒ってないんだね」とつぶやいた
バイト仲間の言葉をふと、思い出した。

解説の竹内真の言葉を引用すると
「異なった立場からの様々な考え方に触れることができる」作品
ひとってみんなやっぱり違う。だからこそ面白い。
そんなことを感じた1冊だった。

2014年05月05日| コメント:0トラックバック:0Edit
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