犬はどこだ
著 者:米澤穂信
出版社:創元推理文庫
発行日:2008年02月29日
内容(BOOKデータベースより引用): 開業にあたり調査事務所“紺屋S&R”が想定した業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。―それなのに舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして…いったいこの事件の全体像とは?犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。新世代ミステリの旗手が新境地に挑み喝采を浴びた私立探偵小説の傑作。
所感: タイトルにあるとおり、
「犬はどこだーーーーーーー!!!!」と疑問に思いながら
進むストーリー。
つまり、犬はほとんど登場しない。
ある意味、タイトル通りといえばそう。
このあたりのセンスが非常に巧いな、と感じる。
主人公は大学を出て就職したとたんに蕁麻疹が出て、
失意のうちに帰郷した25歳男性。
犬探し専門の探偵事務所をオープンさせたが、
舞い込む依頼は孫探しやなんやかんやで、
肝心の犬探しの依頼は来ない。
が、ひとと人の繋がりが密な田舎のこと。
知人との折り合いもあって
犬探し以外の依頼を断ることも出来ず、
事件に巻き込まれていくことになる。
米澤作品には厭世的な登場人物が多い。
本書の主人公も例にもれず。
失意のうちに望まぬ帰郷を果たし、
生き生きとした生活とは程遠い日常を送っている。
平平凡凡と穏やかな日常を望んでいるのだろうが、
そうはいかないのが米澤流。
こういう展開も、米澤作品の典型である。
そしてそれが、とっても好みでもある。
そしてもうひとつの米澤作品の特徴といえば
、ある種の後味の悪さ。
本書でも、後味が悪いようなラストが用意されている。
先ほどから「ある種」や「悪いような」と
あやふやなことばを用いているのだが、
私はこういう結末に嫌悪感はない。
むしろ好きな終わり方だ。
でもって、後味が悪いとも正直感じない。
ただ、「人間らしいなぁ」と思ってしまう。
そしてその「人間らしさ」が好きだったりする。