#104 山内マリコ  『ここは退屈迎えに来て 』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#104 山内マリコ  『ここは退屈迎えに来て 』

ここは退屈迎えに来て
著 者:山内マリコ
出版社:幻冬舎
発行日:2012年08月25日

 



内容(Bookデータベースより引用):
地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、「R-18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。


所感:
ハジメマシテの作家さん。
本書がデビュー作らしい。

著者はR-18文学賞読者賞受賞者。
R-18文学賞受賞作家さんはなにかと気になるのだよね。


本書は8篇の短篇からなる連作短編集。
ある地方都市に生まれた女の子(元女の子を含む)たちの物語だ。

この地方都市がどれくらの規模かというと…
大河のようにどこまでもつづく幹線道路、行列をなした車は時折ブレーキランプを一斉に赤く光らせ、道の両サイドにはライトアップされたチェーン店の、巨大看板が延々と連なる。ブックオフ、ハードオフ、モードオフ、TSUTAYAとワンセットになった書店(以下省略)。

それなりに遊ぶ場所も買い物する場所も揃っている。
ただし、車がないとそこへは行かれない。
田舎ではない。
あくまでも「都市」である。

地方に生まれた者は大概、一度は都会に憧れる。
出て行ったまた帰ってこない者もいれば、
数年を都会で過ごし、帰ってくる者もいる。

本書に収められているのは、
都会から戻ってきた元女の子と、
都会に憧れる女の子たちのおはなし。

戻ってきた元女の子は現実を痛感し、
都会で過ごした日々をまるでフィクションのように感じる。

都会を夢見る女の子たちは、
ここはわたしの住むべきところではない、
都会に出たらわたしはわたしらしく生きられる、
と信じて疑わない。


最初に収録されている
『私たちがすごかった栄光の話』の主人公は 30歳の女性。
一度東京に出て、最近この地方都市に戻ってきたばかり。

次の『やがて哀しき女の子』は25歳と27歳の女性のおはなし。

その次の『地方都市のタラ・リピンスキー』は23歳くらいの大学院生が主役。

と、回を追うごとに主人公の年齢は下がっていき、
ラストの『十六歳はセックスの齢』ではタイトル通り、
16歳の女子高生が主役である。

そしてこれらの各ストーリーを関連付けるある人物。
この人物はどの回にも登場する。
ある時は30歳として。
ある時は23歳くらい。
そしてあるときは回想の中の14歳の中学生。

しかしその人物は女性ではない。
椎名一樹という名の男性(元男の子)。

主役の女の子たちの年齢が下がると同時に。
椎名の過去もどんどん遡っていく。
この構成が抜群だ。

誰にでもあった10代。
できないことなんてないと思っていた。

20代はじめ。
まだまだこれから。

20代半ば…。
「何者」にもなれない自分に気づく頃。

そして20代後半から30代突入…。

この過程を遡ることで、人生の残酷な面が浮き彫りになる。
そしてどうしようもない気持ちになる。
しかし、読了感は悪くない。
だってそれは、「現実」なのだから。

輝きを失った今から、輝いていたあの頃を見返すと…
誰だってそうだけれど、真正面から見ると残酷だ。
でもそれはどこにでもありふれている現実。
となれば、真理といっても過言ではないかもしれない。

ハジメマシテさんだけれど、
これからもっともっと読んでみたい。
そう思う作家さんだ。


都会に出てから本当に生きられる気がしている。人生がはじまると思っている。
都会に出て、誰の力も借りずに、自由にのびのび生きたい。
ちょうどまなみ先生が、あの深緑色のオプティのハンドルを握って、好きな音楽をかけ、ギュゥンとアクセルを踏み込むように――あんなふうに自分の船を自分で漕ぎたい。

――「東京、二十歳。」より




『ここは退屈迎えに来て』収録作品
・私たちがすごかった栄光の話
・やがて哀しき女の子
・地方都市のタラ・リピンスキー
・君がどこにも行けないのは車持ってないから
・アメリカ人とリセエンヌ/東京、二十歳。
・ローファー娘は体なんか売らない
・十六歳はセックスの齢



既に文庫になってます♪




2014年05月19日| コメント:2トラックバック:0Edit
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 コメント一覧 (2)

    • 1. naminnie
    • 2014年05月19日 08:08
    • 私も読んで残酷さを感じつつも爽やかな読後感を味わいました♪( ´▽`)
      閉塞感が気持ちいいほど。
      不思議な感覚ですよね!
      もう文庫になってましたか。
      ここ一ヶ月ぐらいなのかな?
      再読したくなる一冊です!
    • 2.
    • 2014年05月19日 10:14
    • 私は単行本が出てすぐにいただいて読んだので、
      もう文庫になっちゃってたのか―と、
      月日の流れる速さに驚愕しました。

      痛かったです。
      でも上手だなぁと思わずにはいられません。
      ハタチのころに読んだら「け」って思ってたのかなぁ、なんて。

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