#123 絲山秋子 『妻の超然』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#123 絲山秋子 『妻の超然』

妻の超然
著 者:絲山秋子
出版社:新潮文庫
発行日:2013年03月01日


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内容(Bookデータベースより引用):
結婚して十年。夫婦関係はとうに冷めていた。夫の浮気に気づいても理津子は超然としていられるはずだった(「妻の超然」)。九州男児なのに下戸の僕は、NPO活動を強要する酒好きの彼女に罵倒される(「下戸の超然」)。腫瘍手術を控えた女性作家の胸をよぎる自らの来歴。「文学の終焉」を予兆する凶悪な問題作(「作家の超然」)。三つの都市を舞台に「超然」とは何かを問う中編集。


所感:
絲山さん文庫化最新作。

大好きな絲山さん!!!

のはずなのだけれど…本書はあまりページが進まなかった。
なぜだろう。
別段、読み辛いというほどでもなかったのだけれど、
なぜだか、乗り切れなかった。


【超然】
物事にこだわらず、平然としているさま。世俗に関与しないさま。(大辞林より)


本書には三人の立場による「超然」が収められている。
・「妻」の超然
・「下戸」の超然
・「作家」の超然


夫の浮気を知りつつも超然としている「妻」の理津子。
しかし夫・文麿の「妻」として、
或いは夫・文麿に対して、
「わからない」ということがわかってしまったとき、
「超然」はある言葉に変化する。

「超然」の言い換えが妙(=きわめてよいこと)だ。
なるほど。
「わからない」の原因は「超然」だったのか、と
妙(=不思議なこと)に納得してしまう。

「下戸」の広生。
九州男児であっても飲めないことに超然としている。
飲めないこと自体はどうでもいい。
「飲めない」からついてくる「しがらみ」が鬱陶しい。
そして身近なひとの善意の厚顔さに辟易する。

善意のひとりよがりな傍若無人に対する意見には
心から同意する。
これほどやっかいで面倒なことはない。


さて問題は最後の作家。
とても読み辛かった。

色々なことに超然としている「作家」の私。
腫瘍切除術を受けることになり、
手術の結果、嚥下障害と嗄声の可能性が生じると聞いても
医者の前で冷静を装う。

しかしその心の裡は葛藤に不安に強がり。
とてもじゃないけれど「超然」とはいられない。

絲山さんは自身の経験を作品に生かすことが多い。
邪推なのだろうけれど(そうであってほしい)、
もしかして絲山さんがこの病を経験したのか?と
勘ぐってしまった。


三人の「超然」を通して絲山さんは問う。
「超然とは何か?」

わたしが本書を読んで導き出した答は…
「超然」とは「装う」ものなのだろうな。
「ほとんどの人においては」と注釈をつけて。




『妻の超然』収録作品
・妻の超然
・下戸の超然
・作家の超然

2014年05月30日| コメント:2トラックバック:0Edit
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 コメント一覧 (2)

    • 1. miroku
    • 2014年05月30日 19:23
    • この作品に限らず、最近の絲山作品はパワーダウンしているような気が・・・・・・。
      一番好きなのが『逃亡くそたわけ』だから、たぶん惠さんとは微妙に違うとは思うのですが・・・・・・。
      なんと言うか……普通とはずれた普通を生きているという感じが、薄くなったというか、怨念・・・・・・じゃないけれど、なんかそんなようなものを感じなくなったというか・・・・・・。
      円熟?

      まあ、そのあたり、惠さんはどう感じておられるのかなぁ、と。
    • 2.
    • 2014年05月30日 21:26
    • mirokuさん

      絲山さん、初期のほうが面白かったですよね。
      突き抜けていたというか。

      ストイックになにか一点を考えて突き詰めるっていうのは
      今も昔も変わりないと思います。
      でも前はなんというか…扱うテーマに
      わかりやすいユーモアがあったように思うんです。

      精神を患っているけど逃亡しちゃう。
      働かなくていいからひとりで質素に外界との接触をできるだけたって生活する。
      袋小路の男を愛しちゃう。

      円熟っていうのとはまた違う気がします。
      前は書きたいから書いてただけだと思うんですよね。
      今は依頼に応じて書いているような。
      でも依頼に応じながら突き詰めるっていうポリシーみたいなもんは
      捨ててないなぁ、みたいな。

      需要がある作家さんだからでしょうか。

      伊坂さんも変わっちゃいましたよね。
      東野さんも昔は軽いミステリだったのになぁ。
      最近はめっきり社会派ですもん。
      映像化とかしやすそうで受けもよさそう。
      A子B子とか言ってる場合じゃないみたい。

      需要があると読めてうれしいけれど、
      デビュー作独特のやってやろう精神がなりをひそめるのはさみしいです。

      折原さんとか歌野さんとか安孫子さんとか
      蒼井さんとか、マニアックに頑張ってらっしゃいますよね。
      とくに折原さんは病的だと思います。
      蒼井さんはどこに需要があるのかわかりません(あ、私は応援してます)

      出版業界も厳しいとは聞きますがね。
      色々考えて語っちゃいました。

      駄文長文ついでに乱文ごめんなさい。

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