その桃は桃の味しかしない
著 者:加藤千恵
出版社:幻冬舎
発行日:2012年04月25日
内容(Bookデータベースより引用): わたしとまひるは同じマンションに暮らしている。
しかし、私たちの関係について説明するのは、おそろしく厄介である。
高級マンションの一室で暮らす、わたし・奏絵とまひる。一緒に住んでいるにもかかわらず、わたしたちは、姉妹でも友達でもなかった。ふたりの共通点は、同じ男性の愛人であること。「この日々が永遠じゃないことはわかっている。けれど、永遠なんて、どこにもないのだから、それで構わない」。そう割り切って始めたはずの奇妙な共同生活。だが、食事をともにする機会を重ねるうち、奏絵は、まひるとの生活を、大切なものへと思い始めている自分に気づく――中華風スープ、冷やし豚しゃぶ、ビーフシチュー、桃、ピーナツバターとツナのサンドイッチ、オムライス、そうめん、納豆汁、お粥――恋敵と食べるごはんは、どうしてけっこう美味しいんだろう。愛しすぎることも、憎みすぎることもできないふたりの生活を、丁寧な筆致で描く。大ヒットとなった小説集『ハニー ビター ハニー』以後、小説家として活躍の幅を広げ続けてきた著者が満を持して放つ、初の本格長編小説。
所感: 恋愛小説は苦手だ。
でも加藤さんは好き。
不倫が出てくるストーリーは嫌いだ。
でも本作は不思議と嫌じゃなかった。
それはきっとわたしが加藤千恵ワールドに魅せられているから。
平井さん(40代、妻子あり)の愛人として
共同生活を送るまひるとわたし(奏絵)。
高級マンションを与えられ、
生活費も貰い、不自由のない生活。
バイトをして外と繋がっている奏絵と、
平井さんだけいればそれでいい、まひる。
外と繋がっているといっても奏絵は
決してフレンドリーな性格ではない。
バイトはあくまでバイト。
職場の人間とは必要以上に関わりたくない。
彼らはあくまで「職場のひと」だ。
ひとり暮らし経験もあり、一通りの家事はこなせる。
対してまひるはハタチのころからこの生活。
家事なんてできないし、したいとも思ったことがない。
可愛いものに囲まれて、
嫌なものには拘わらず、
おとぎの国の世界に住んでいる…のか、
それとも「籠の鳥」か。
そんなまひると食事を共にするようになって
まひるに対する愛着を抱くようになる奏絵。
ふたりの間に生じたのは「友情」なのか。
この作品のテーマは何なのだろう。
友情?不倫??
「女の子」の成長?
(注:ここで言う「女の子」は年齢的なものではない)
うーむ。
色んなことがない交ぜになっていて、結論は出せない。
どれもがそうであり、どれもが違うような気もする。
あやふやな雰囲気。
けれども語り口は淡々。
最後まで読んだ後のわたしの第一声は
拍子抜けするくらい単純なものだった。
で?ミステリ(主に犯人探しが好き)ばかり読むわたしにとって、
一定の結論のない物語はハードルの高い読み物である。
堪能のしかたがわからない。
だからといって、楽しくないわけではない。
何が描きたかったのか…それはわからない。
わたしの単純な感覚では理解できない。
でも、嫌いじゃない。
なんとも表現ができない物語。
これまでに読んだ短篇のように、
きゅっとなるフレーズもなく、
ただただ淡々と読んでしまった。
それがいいのか悪いのかはわからない。
タイトルもはっきり言ってわたしには解読不能だ。
『その桃は桃の味しかしない』。
うん、桃が蜜柑の味だったらいやだよね(笑)。
でもたぶん、著者が込めた想いは
そういうんじゃないとは思う。
だけど、それが何かはわからない。
わからないことだらけの作品だ。
ただはっきりと言えるのは、嫌いじゃない、ということだけ。
たぶん、好きではない。
でも「好きではない」よりも
「嫌いじゃない」のほうがしっくりくる。
ただ、句点の多さとたまに登場する倒置は
好きじゃなかったな。
著者の意図がわたしの好みには合わない。
全体的にもそういうことだったのかもしれない。
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