#161 三田誠広 『いちご同盟』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#161 三田誠広 『いちご同盟』

いちご同盟
著 者:三田誠広
出版社:集英社文庫
発行日:1991年10月25日




内容(BOOKデータベースより引用):
中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。


所感:
殺人事件ばかり読んでいるのに、死をテーマにした作品は苦手だ。
特に「死」を装飾的モチーフとして用いる作品は好まない。

誰かの「死」があるからこそ、美しい。
その「死」があるからこそ、切なく、儚い。

だけど「死」はそんなに美しいものじゃない。

誰だっていつかは死ぬ。
誰かが、人間は生まれた瞬間から死に向かって生きるって
言っていた記憶がある。

確かにその通り。
みんな、いつかは死ぬ。

でも「死」って案外遠い。
でもある日突然、身近になったりもする。


そして本書にも、「死」が登場する。


良一が小学五年生の時、
近所のアパートで小学五年生の男児が飛び降り自殺をした。
自殺した少年は「努力なんて虚しい」といった態度の、
たぶん11歳にしては大人びた子どもだった。
良一は、その少年の気持ちがわかるような気がした。

あれから4年。
良一は中学三年生になり、受験生となった。
同級生で野球部のエース、徹也に撮影を頼まれたことが
きっかけで、徹也の幼なじみの直美と知り合う。

直美は重症の腫瘍で入院中。
大人たちは言葉にしないけれど、
彼女はもう長くない。

夢を持ってきらきらと生きていたはずの人生が
もうすぐ終わることを悟った直美の感情は
アップダウンが激しい。
良一はそんな彼女に惹かれはじめる。

でも彼は、現実を直視できない。
直美が逝ってしまうことが解せない。
理解はできる、でも信じたくない。
だから病院からも足が遠いてしまう。

かと言って、良一には家にも居場所はない。
好きなピアノの才能を見限った母。
家に居づらい父。
優秀すぎる弟。

誰もが嫌いじゃないが、
誰といても息が詰まる。

自分と、自分を取り巻く環境との確執。
ひりひりする。
ぴりぴりする。
哀しくなる。

そして思い出す。
どうせみんな、いつかは死ぬんだ。



やさしく平易な文章で、良一の苦悩や戸惑いが
ひしひしと伝わってくる。
これが15歳の瑞々しさというものだろう。
そして15歳故の不安定さとも言える。

本書にはウルトラCなラストはない。
誰もが想像している通りに、直美の命は歩む。

しかし直美を通して、良一は真正面から「死」に取り組む。
そしてそれは同時に「生」を考えることでもある。

先に、わたしは死をテーマにした作品は苦手だと書いた。
でも、死に真正面から取り組む作品は苦手ではない。
そして本書はまさしく後者だ。

ありふれた言葉でいえば、
感動した。

そして、大人になるということは
悲しくも嬉しくも、折り合いをつけることなのだろうと思った。

本書に対しては多くの人が「15の頃に読みたかった」と言っている。
でもわたしには、そうは思えない。

もし15の頃に読んでいたら…
良一に直美に徹也に、そして色んなことに反発した気がする。
それは思春期特有の傾向。
いま思えば「恥ずかしい」、「ほろ苦い」過去。

それを超えて20年近くも経った今だからこそ、
素直に本書を読むことができたんじゃないか、
と思うのです。




ちなみに…
最近の著者はこういうの書かれてます。
気になる…。





2014年06月21日| コメント:0トラックバック:0Edit
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