人格転移の殺人
著 者:西澤保彦
出版社:講談社文庫
発行日:2000年02月15日
内容(Bookデータベースより引用): 突然の大地震で、ファーストフード店にいた6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の隔絶された空間で連続殺人事件が起こる。犯人は誰の人格で、凶行の目的は何なのか?人格と論理が輪舞する奇想天外西沢マジック。寝不足覚悟の面白さ。
所感:
面白かった~~~!!!
SFって苦手なのだけれど、
著者の描くSF設定はすんなり受け入れられる。
いや、むしろ「めちゃくちゃ好み」!!
それはきっと、著者がSFという特殊設定に逃げていないからだろう。
だから
ミステリで瞬間移動能力を持つ主人公を登場させても読者に受け入れられる。
本書に登場する特殊設定は、人格転移。
冷戦時代にアメリカで研究されたある部屋に入ると、
入った人間の中で人格が入れ替わるというのだ。
例えばその部屋にAさんとBさんが同時に入室したとする。
するとAさんの外見にBさんの人格(b)が入り、
Bさんの外見にAさんの人格(a)が入ることになる。
そしてその人格aとbは、
規則性のないタイミングで交代を繰り返す。
そしてそれはどちらかの心臓が止まるまで続く。
しかしその研究も冷戦の終わりと共に封印され、
絶対の秘密として未来永劫解き放たれる予定ではなかったのだが…。
大地震が起こった際に、ファーストフード店にいた6人が
シェルターと間違えてこの封印されたはずの部屋に入ってしまった。
そして6人の中で起こる人格転移。
それだけも大混乱なのに、
隔離された6人が次々と殺され出して…
人格転移というぶっとんだ設定で起こる連続殺人。
犯人はおおよそ見当がつく。
普通の設定ならば、
犯人を縛り上げておけばことが済む。
しかしここで人格転移という設定のしばりが発生する。
犯人の人格が入った身体を縛り上げても、
次に人格が移転すると犯人の人格は別の身体に入ってしまうのだ。
だから縛り上げることに意味はない。
ならばどうすればよいのか…。
ただ犯人を見つけるだけではだめだ。
犯人探し、動機探しに加えてこのスリルも楽しめる。
いや~、面白かった(笑)。