#185 朝比奈あすか 『憂鬱なハスビーン』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#185 朝比奈あすか 『憂鬱なハスビーン』

憂鬱なハスビーン
著 者:朝比奈あすか
出版社:講談社文庫
発行日:2010年10月15日




内容(裏表紙より引用):
東大卒、有名企業に就職し、弁護士の夫を持つ29歳の私。結婚して仕事は辞めたけれど、優しい夫と安定した生活がある。なのになぜこんなに腹が立つんだろう?ある日再会した、かつて神童と呼ばれた同級生。その話に動揺した私は、まだ自分に何かを期待しているのだろうか。第49回群像新人文学賞受賞作。


所感: 
ハジメマシテの作家さん。
なんだか宙ぶらりんそうな感じがして、手にとってみた。

タイトルにある「ハスビーン」とは、Has Beenとのこと。
研究社の辞書を引くと
《口語》 盛りを過ぎた[人気のなくなった]人; 時代遅れの人[もの], 過去の人[もの].
とある。


ちなみに本書では、こんな説明が作中でなされている。
「(略)ガイジンはさ、一発屋のことをHas Beenって言うんだって。Mr.Has been.かつては何者かだったヤツ。そして、もう終わってしまったヤツ」


主人公の凛子は東大卒の元エリート。
弁護士の夫との結婚を機に有名企業を退社し、
今は一応専業主婦。

お金にも困らず、
やさしい夫との安定した生活を送っている。
だけど…

彼女は日々、いろんなことにいらいらする。
やさしすぎるお姑さん、
失業保険給付窓口の女性、
就職支援セミナーに集う人々…
あの人もこの人もあれもそれも…
夫でさえも、いらいらの対象になっている。

読んでいて、イタかった。
凛子がイタい。
イタいイタいイタい。
イタすぎる。
なんてヤな女なんでしょうか。
と、色々嫌なところが目に付いてしまう。

凛子がいらついているのはきっと、満たされていないから。
東大を出て、弁護士の夫を持っても満たされない凛子が「ヤ」なのではない。
「ハスビーン」というしがらみにがんじがらめになって、
抜け出せないでいる現状に気付くことなく、
その捌け口を他者にしか向けられない
凛子の幼稚さが「ヤ」なのだ。
読んでいてどうしようもなくイライラする。

だけど、読んでいてわたしは気づいていた。
ここまで凛子に腹立たしさを募らせるのは、
自分の中にも凛子と通じる部分が少なからずあるからだ、と。

もやもやっとした日常。
解決方法がみつかなくて、
試行錯誤の暗中模索の日々。

自分に色んなことを問いすぎて、
周りが見えなくなってしまった凛子は
「ありがとう」や「ごめんなさい」という
当り前のことさえ言えなくなっている。

あぁ、やっぱヤな女だなぁ…凛子。
考えれば考えれば嫌な女だ。
仮に凛子のキャラが男だったとしても、
やはりイヤなやつだ。

でもそんな彼女も最後には
「ハスビーン」から抜け出せるきっかけのようなものを見つける。
彼女のこれからがもっと安らかな日々となるよう
願わずにいられない。

2014年07月05日| コメント:0トラックバック:0Edit
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