三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人
著 者:倉阪鬼一郎
出版社:講談社ノベルズ
初 版:2009年09月07日
内容(裏表紙より引用): 「4月9日(金)午前0:20にお越しください。お目にかかれるときを楽しみにしております。黒鳥館主人」招待状を手に東亜学芸大生・西大寺俊は黒鳥館と名づけられた壮麗な洋館に赴く。招待客は全員無作為に選ばれたという。ウェルカムドリンクを主人から受け取った西大寺は、館内の完全な密室で怪死。呪われた館を舞台とした凄惨な連続殺人の火蓋が切って落とされる―。復讐のため建てられた館で繰り広げられる大惨劇。
所感: この作品は、
以前やっていたブログで記念すべき400冊目になった本である。
そしてその記事をアップする際、私はこんなことを書いていた。
**************************************************************
記事を書こうとして、わたしは衝撃を受けた。まさか…。
まさか、記念すべき400冊目がこんな迷作になろうとはっ!!!!
いや、そもそも『六とん』だの『六とん2』だのと迷作に手を出すわたしが悪いのだ。
でもっ!!でもっ!!!
たった一度しか回ってこない400というキリのいい節目を
、なぜこの作品で迎えなければいけないのだーーーっ!!!!
***************************************************************
と、冷静沈着且つ容姿端麗な私(タイプミスではありません)が
思わず取り乱してしまうほど、
衝撃的な作品だった。
まずね、トリック。
そしてそれに掛ける著者の意気込みと、労力。
そのどれもが突き抜けている。
しかし残念なことに一生懸命頑張ったからといって名作になるとは限らない。
本書の場合、そもそも著者は名作を書こうとなんてしてはいない。
作者が狙っているのは…キワモノ、もしくはイロモノだ。
東亜学芸大生の元に順番に届けられるある洋館からの招待状。
招待客の選出は無作為だと館の主は主張するが、
彼らにはある共通点があった。
招待状を受け取った学生は主の指示通り誰にも告げず、
ひとり洋館を訪れる。
死が待っているとも知らずに…。
そして最後の招待客の男が館に足を踏み入れたとき、
主は男に一冊の本を手渡した…。
ここで主によって手渡される本というのが、
『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』――本書である。
作中では、『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』は
『四神金赤館銀青館不可能殺人 』という作品を
お手本にして書いた私小説となっている。
その点を最後の被害者となる男に説明するくだりをここで引用する。
「手本、と言うと?」
「倉坂鬼一郎という作家がおります」
「知らないな。本は読まないから」
「当然でございます。本を読む人にもあまり知られていませんので」
「ふーん、マイナーなんだ」
「人には薦めづらい作風ですから。まあ作品にもよりますが、無理に薦めたら下手をすると人間関係を悪くします」
「で、その作家が」
「『四神金赤館銀青館不可能殺人』という作品を書いています。率直に申しまして、バカミスです。たとえあのアイデアを思いついたとしても、あれを律儀に伏線を張りながら書く作家はあまりいないでしょう」
「なるほど、バカなんだ」
「バカです。で、それをお手本にして、同じノベルズの体裁でこの『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』を書いてみたわけです。漢字の数を一つだけ増やして」
書きづらいことを――しかも作品内で――著者が代弁してくれている。
そう、本書はバカミス。
そして著者が労力をかけるベクトルの方向は、
根本的に間違っている。
でもそれだけの気合を注入して仕掛けたトリックは、
鳥肌ものである。
でもね、ひとつ言っておく。
こんなこと、誰も思いつかなねーよっ!!!! 万が一思いついたとしても誰もやらない。
いや、やろうと思いはしてもやり遂げるなんてできない。
しかしそれを著者はやってのけた。
すごい精神力だ。
でもパワーをかけるところを激しく間違っている。
著者も言っている通り、
本書はやたら滅多と人様にお薦めすることができない。
図書館派の方はこういう変な本もあるのだと読まれてもいいかもしれないが
(それでも人によっては時間を捨てることになる)
購入派の方にはとてもじゃないけれど、薦められない。
とてもじゃないがお薦めはしない。
エロくもグロくもないけれど、薦められない。
だって…
くだらないのだもの。 本書は、どうあがいたって文庫化されることはない作品だ。
万が一文庫化されるとしても、
その時にはかなり別の作品となっているだろう。
「そういう」作品なのだ。
しかしとても残念なことに、
私はそういうベクトルを間違った作品が嫌いではない。
だから
『四神金赤館銀青館不可能殺人 』も読む。
自己責任で、読む。
…。
そんな三十路独身女。
将来は大丈夫かしらん??
かなり心配だ。
さて、今日の記事とは関係ないのですが、台風の被害には遭われませんでしたでしょうか?惠さんのお住まいの辺り、相当な風雨に見舞われたようでしたが…。