#206 絲山秋子『ラジ&ピース』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#206 絲山秋子『ラジ&ピース』

ラジ&ピース
著 者:絲山秋子
出版社:講談社文庫
発行日:2011年10月14




内容(BOOKデータベースより引用):
自分は醜いというコンプレックスを抱く野枝は、実家を出て群馬県のローカルFM局で人気番組を担当するようになる。誰からも干渉されない自由に閉じ篭もる野枝だが、その心の隙に気さくな方言で話す女医の沢音が入り込み…。横浜と会津出身の二人の女性の呼び合う心を描く「うつくすま ふぐすま」を併録。


所感:
やさしい物語だった。
それも泣きたくなるくらいに。

コンプレックスの塊である野枝は
群馬のローカルFM番組「ラジ&ピース」の人気DJ。
外見を気にせず、声だけで勝負ができるこの仕事が大好きな32歳。

しかし仕事仲間とも打ち解けることはなく、
野枝はコンプレックスを免罪符のように
ひとり自分の殻に閉じこもる。

そんな野江の心の内側にずかずかと入ってくる女医、沢音。
焼鳥屋で近くに座っただけなのに、野枝を友だちだと言う。
戸惑い、鬱陶しがる野枝。
でも沢音との友人関係は意外なほどに心地よく、
野枝は他の人間とも接触をするようになっていく…。


三十路の閉じこもり。
内に籠る理由はひとつ――自分が傷つきたくないから…。

「思春期かよっ!!!」
って突っ込みたくなるひともいるかもしれない。
でもいつだって誰だって、出来れば傷つきたくないと思うもの。

過去に受けた傷が深ければ深いほど、
その傷を引きずっていればいるほど、
殻の深いところに閉じこもる。

そこだけが安全な場所だから。
自分が自由でいられる、誰からも否定されない場所。

でも同時に、誰かに求められたいとも思っている。
それはエゴイズム?

でも、そんなの、みんな、だと思う。
みんな、多かれ少なかれ「野江」なのだと思う。

他人と関わる、他人を求めるということは、
そこから受ける痛みもあるけれど
それと同時に喜びや楽しさもある。

これは野枝の成長の物語。

人間、いくつになっても成長ってできるんだよね。
ほんの些細なきっかけさえあれば。


絲山作品は、自分の嫌なところと向き合わせてくれる。
決して無理強いすることなく、自然に。

平易な文章で淡々と綴られるのに、
色々考えさせられる。
そしてやさしい気持ちになれる。

こんなにいろいろ感じさせてくれるひとって
他にぱっと思いつかない。
オチなし話って苦手なのにな。
不思議だ。


ほんと、やさしい物語だった。
泣いちゃうくらいに。





『ラジ&ピース』収録作品
・ラジ&ピース
・うつくすま ふぐすま

2014年08月02日| コメント:0トラックバック:0Edit
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