ダブルダウン勘繰郎 トリプルプレイ助悪郎
著 者:西尾維新
出版社:講談社文庫
初 版:2010年01月15日
内容(表紙より引用): 夢も希望もない世の中だって?なければ作ればいいだけじゃないか―無理だの不可能だのってのは、実はただの御託だったりするんだよ。まずは手を伸ばしてみるところから始めてみればいいじゃねえか。案外それは、あっさり届いちまうかもしれないぜ(『ダブルダウン勘繰郎』)。一回盗みに入るたびに三人殺す。そう、私こそは三重殺の案山子。夢と希望の化身。私は誰にも捕まらない、私に盗めないものはない、私に殺せない人間はいない。私は道理に満ちていて、私は可能性に満ちている。ゆえに欲しいものは必ず手に入れる(『トリプルプレイ助悪郎』)。
所感: ハジメマシテの作家さん。
読んだ後で気付いたのだけれど、
本書は清涼院流水の『JDC』シリーズのトリビュート作品という。
残念ながら
清涼院流水は未読。
それ故、清涼院流水を模倣した部分と
西尾維新のオリジナル部分の見分けがつかず、
本書では西尾カラーのさわりさえも掴めなかった。
『JDC』とはJapan Detectives Club(日本探偵倶楽部)のことで、
オリジナルの清涼院流水作品では
JDCの探偵たちが事件を解決するシリーズものとなっている。
そして本書に収められた二篇…
『ダブルダウン勘繰郎』および『トリプルプレイ助悪郎』も
JDCの探偵が事件を解決するというストーリー展開である。
『ダブルダウン勘繰郎』 出張帰りのサラリーウーマン蘿蔔むつみは
JDCビルディングの前で虚野勘繰郎(15歳)と出会う。
探偵を志す勘繰郎は日本で最も優秀な探偵集団であるJDCを偵察しているところだった。
ところが、JDCビルディングの前に停まっていた車に不信を抱いたところからふたりは、
日本探偵史上最大の悪逆者、逆島あやめに出会ってしまう。
かつてJDCに所属していたあやめは、
66人ものJDC所属の探偵を殺害した殺人者。
彼女はJDCビルディングにニトログリセリン(爆弾の原料)を
満載した車を突っ込んで爆破する算段を整えていたのだが、
勘繰郎(とむつみ)がそのニトロを車ごと略奪してしまったのだ…。
『トリプルプレイ助悪郎』 一回の盗みで三人殺すスケアクロウから、
偉大な作家髑髏畑百足の長女、一葉の元にメッセージが届いた
来たる七月二十四日、貴女のお父上である髑髏端百足先生の最後の作品を頂戴しに裏腹亭に参ります。どうかお構いなく。 裏腹亭とは百足が次女の二葉と暮らすお屋敷。
しかし当の百足は数年前から行方不明で、
「最後の作品」なるものが何を指すのか見当もつかないが、
気になった一葉は忌々しい妹の住む裏腹亭に向かう。
そしてJDCからはスケアクロウ当番の海藤幼志が派遣された。
スケアクロウが指定した七月二十四日に裏腹亭に集まったのはたった五人。
スケアクロウは本当に三人殺すのか。
そして彼の言う「最後の作品」とは何か…。
端的に言うとこの二篇は本格ミステリ。
フェアをモットーに書かれている。
が、その「フェア」部分についての種明かしも本編でされるので、
そこはちょっと疑問の残るところ。
ここを「サービス」と取るか「いいわけ」と取るかで印象は変わってくる。
元祖『JDC』シリーズを読んでいないので、
どこがどう「トリビュート」されているのか比べられないのが悔しい。
とっつきにくい文章運びで(読む)リズムをつかむまでに苦労したのだけれど、
それが清涼院流水を真似たものか、
それとも西尾オリジナルのものかもわからない。
西尾維新作品はもう数冊読まねばなるまい。
そして、清涼院流水の作品(特に
『JDC』シリーズ)も。