#278 高田崇史『カンナ吉野の暗闘』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#278 高田崇史『カンナ吉野の暗闘』

カンナ 吉野の暗闘
著 者:高田崇史
出版社:講談社ノベルズ
初 版:2009年01月08日




内容(裏表紙より引用):
社伝を持ち去り失踪中の諒司が、奈良・吉野山に現れたという。捜しに行った甲斐らは、思わぬ事故に遭遇!その縁で山岳ガイドの光昭と親しくなるが、黄金伝説を追いかけ、修験道の開祖・役小角を信奉する彼は、殺人事件の容疑者だった。呪術で人々を苦しめ流罪になった小角の実体は?歪められた真実が明らかに。


所感:
神社のお気楽跡取りの甲斐としっかり者の現役東大生巫女の貴湖が歴史の謎に迫りながら冒険を続ける歴史アドベンチャーカンナシリーズ第三弾。

QEDシリーズで得た知識を下地にしたライトな読み物で
シリーズ通しての「見えない敵」の正体が知りたくて、
続けざまに読んでしまった。


甲斐が跡を継ぐ予定の出賀茂神社の社伝である『蘇我大臣馬子傳暦』を
持ち出して失踪した諒司を追って飛鳥天草と巡った甲斐と貴湖だったが、
依然として諒司の消息はつかめず。

この巻では、諒司と思しき男性が現れたとの情報を元に吉野へと向かう。

奈良県南部に広がる山岳地帯である吉野。
通称を役行者(えんのぎょうじゃ)と呼ばれる
役小角(えんのおづぬ)が修験道を開いた場所としても知られる。

役小角について伝わる話がある(参考文献:『続日本紀』)
人々を言葉で惑わした。鬼神を使役して水を汲み薪を採らせた。命令に従わないときには呪で鬼神を縛た。こういうことの積み重ねで人々を苦しめたため、流罪になった

しかしここで思い出さねばならないのは
現代のわたしたちが学校で当然のように学んでいる歴史とは
、勝者の歴史であるということ。

勝者が自分たちに都合の悪い記述を残すわけがない。
となれば現代に伝わる役小角の真の姿は、
歴史書におけるそれとは異なるのではないだろうか。

甲斐と高湖(と忍者犬であるミニチュアブルテリアの「ほうろく」)は
吉野で親しくなった山岳ガイドの光昭(彼は役小角を信奉している)と共に
「役小角の謎」に迫る。

またその過程で甲斐たちは
「神様は、金気と女性を嫌う」という迷信や、
「吉野」という地名に関するひとつの謎をも解き明かす。

確かに…
「神は金気を嫌う」とは聞くけれど、
神社には賽銭箱はあるし鈴もある。
本当に神様が金気を嫌っているのならば、
それらのものは置かないはずだ。

また「吉野」という地名については、
なぜこの場所を吉「野」と呼ぶのか、が謎である。

先にも書いたが、吉野と呼ばれる地域は山岳地帯だ。
広がった「野」などどこにもない。
なぜ山々が連なる土地にわざわざ
対義語といっても過言ではない「野」と名付けたのかは
QEDシリーズの『QED ventus 熊野の残照』
詳しく述べられているので割愛するが、
その理由は勝者の歴史に隠されたある「事実」であるという。

と、歴史上の疑問ばかりを並べてしまったが、
このシリーズで騙られる蘊蓄はQEDのそれの何分の一程度。

QEDを求めて本書を手にのばしてはならない。
本書にはちゃんと「歴史アドベンチャー」という銘が打たれていて、
QEDとは全くの別物だ。
この認識をちゃんともっていなければ、
QEDファンが本書を楽しむのは難しいだろう。

ただ、本書でも登場人物にこんなことを語らせるなど、
本質は変わらないのだけれど。
「『百人一首カルタ』も、それらの歴史的背景を踏まえて遊ぶから楽しいのであって、
ただ単に文字だけ拾うのでは、何が楽しいのか、その意味が全く不明になってしまいます。そんなことをするならば、別に『百人一首』出なくても良いじゃないないですか」

QEDで主人公のパートナーを務める奈々と比べて、
本シリーズの高湖は――その気の強さからか――人気が低いようなのだけれど、
わたしは結構好き。
このまま生意気キャラのまま突き進んでほしいなぁ…なんて思ってもいる。





2014年11月13日| コメント:0トラックバック:0Edit
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