あの頃の誰か
著 者:東野圭吾
出版社:光文社文庫
発行日:2011年01月20日
内容(BOOKデータベースより引用): メッシー、アッシー、ミツグ君。長方形型の箱のような携帯電話。クリスマスイブのホテル争奪戦。あの頃、誰もが騒がしくも華やかな好景気に踊っていました。時が経ち、歳を取った今こそ振り返ってみませんか。東野圭吾が多彩な技巧を駆使して描く、あなただったかもしれない誰かの物語。名作『秘密』の原型となった「さよなら『お父さん』」ほか全8篇収録。
所感: 過去に発表されたけれど書籍化されなかった短編集の寄せ集め(身も蓋もない言い方ですね、すみません)。著者曰く、本書に収録されているのは全て「訳あり物件」だそうだ。
メッシー、アッシー、ミツグくん(笑)。
バブル期を体感した世代でなくても、
この三者の呼び名は耳にしたことがある。
もはや文化遺産クラス級の、
日本列島が浮かれていた時代。
テレビで岡本夏生が当時の衣装を再現していたのを見たことがあるのだけれど、
まるで仮装行列だった。
あれで道を歩いていたっていうから、時代って恐ろしい。
その頃を舞台に描かれた『シャレードがいっぱい』から始まる本書。
収録されている全てが、バブル期が舞台というわけではない。
それどころが、収録されている作品にまったくといって統一感がない。
でも、それが逆にとても新鮮に感じられた。
東野氏の短編に対するわたしのイメージは「いい」。
でも、この「いい」は「良い」ではなくて、
前に「どーでも」が付く(辛口すぎるかしらん)。
読まなくても読んでも、どーでもいい。
良く言えば、とってもライトで読みやすい(だからすぐ忘れる)。
時間潰しには最適だとは思う。
だけど、それは同時に、時間がないひとが敢えて
時間を割いてまで読む作品でもないという意味でもある。
と、エラソーなことを書いているわたしは、
「楽しむ」ために本を読むので
重いものから軽いものまで、その日の気分で選ぶ。
だから失敗も少なかったりする(ここ、自慢)。
最近の東野長編に慣れている―そしてそれを期待している―ひとが手に取ったら、
がっかりする一冊かもしれない。
が、わたしにとっては面白い一冊だった。
毒気もあって楽しい。
特に(話は戻るけれど)バブル期の作品は時代錯誤で、
本当に面白かった。
何度も言うけれど、「万人受け」はしない作品集。
でも、わたしは好き(東野短編で一、二を争うくらいに)。
『あの頃の誰か』収録作品 ・シャーレードがいっぱい
・レイコと怜子
・再生魔術の女
・さよなら『お父さん』
・名探偵誕生
・女も虎も
・眠りたい死にたくない
・二十年目の約束