#305 高村光太郎『智恵子抄』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#305 高村光太郎『智恵子抄』

智恵子抄
著者:高村光太郎(中村稔編)
出版社:角川文庫
初 版:1999年01月25日


智恵子抄 角川文庫 / 高村光太郎 【文庫】

智恵子抄 角川文庫 / 高村光太郎 【文庫】
価格:637円(税込、送料別)



内容(裏表紙から引用):
<『智恵子抄』は特異な詩集である。構成が特異なだけではない。彼らの愛のかたちが特異であり、その悲劇的な愛の美しさにおいて特異である。私たちに高村光太郎と智恵子が彼らの生を賭して遺してくれあ貴重な遺産である。>(解説:中村 稔)
『智恵子抄』初版・全、同補遺、同以後の三部構成によって、光太郎生前の意図を出来る限り忠実に再現しながら、智恵子に関する詩文を完全収録した永遠の名詩集。待望の文庫化決定版!


所 感: 
『智恵子抄』というのを耳にされたことはあるだろうか。

『智恵子抄』とは
「僕の前に/道はない/僕の後ろに/道は出来る」で始まる『道程』という詩で
有名になった萩原朔太郎が30年間に渡って妻・智恵子について書いた作品である。
収録されている短歌、三文、詩の全てが智恵子一色。
まさしく『THE・智恵子』な作品だ。

『智恵子抄』に書かれた30年とは1911年から1941年のことである。

1911年は光太郎と智恵子が出会った年。
1913年、ふたりは結婚。

結婚後、父の死や実家の破産、離散といった悲しみが智恵子を襲う。
もともと病気がちだった智恵子は1931年に統合失調症を発症、
翌年には自殺未遂を起こす。

そしてその自殺未遂から3年後の1935年秋、肺結核により死亡する。
享年52歳。

彼女が生前放った言葉の中で最も知られていうのは
『あどけない話』の冒頭にある
「智恵子は東京には空がないといふ」だろう。

ちなみに友人は「そうは言っても東京にはモノがある」と言っていた。
それはわたしもそう思う。
でも、智恵子が生きた時代は今とは全く違う…。

智恵子と出会ってから智恵子について書き続けた朔太郎は
智恵子が死んでも尚、智恵子について書くことを止めなかった。
そしてそれら智恵子についての作品が収められているのが『智恵子抄』である。

現在、手に取ることができる『智恵子抄』(文庫)はおそらく二冊だけ(わたし調べ)。
ご紹介している角川版と、もうひとつは新潮社から発行されている。

この二冊は同じようでいて実は大きな違いがある。
裏表紙にあるように本作には『智恵子抄』の「初版」と「補遺」と「以後」が収められている。

「初版」に収められている詩は29編。
この29編と短歌とエッセイを少しばかりをまとめて「初版」というようだ。
これが新潮版の『智恵子抄』。

しかし本作には加えて「補遺」と「以後」が収められているため、
全部で40編近い詩が詰まっている。

「だからどうなのだ」と言われたら…
確かにどうってことはないかもしれないけれど、
わたしは「以後」に収められている詩が結構好きだったりする。
もちろん有名な『あどけない話』『レモン哀歌』が収められているのは「初版」。

だけれど…「補遺」や「以後」も案外よいな、と。
一歩間違えたら「ストーカー」に思われかねない
きわきわの心理に嫌悪感を抱くかと思っていたのだけれど、
それは間違いだった。

有名な詩は検索すれば出てくると思うので、
あまり知られていないと思われる詩を少し引用する。



値ひがたき智恵子(「初版」より)

(前略)
智恵子はくるしみの重さを今はすてて、
限りない荒漠の美意識圏にさまよひ出た。

わたしをよぶ声をしきりにきくが、
智恵子はもう人間界の切符を持たない。




報告(「以後」より)

日本はすつかり変わりました
あなたの身ぶるひする程いやがっていた
あの傍若無人のがさつな階級が
とにかく存在しないことになりました
すつかり変つたといつても
それは他力による変革で
(日本の再教育と人はいひます)
内からの爆発であなたのやうに
あんないきいきした新しい世界を
命にかけてしんから望んだ
さういう自力で得たのでないことが
あなたの前では恥かしい
(後略)



元素智恵子(「以後」より)

智恵子はすでに元素にかへつた。
わたくしは心霊独存の理を信じない。
智恵子はしかも実存する。
智恵子はわたくしの肉にいる。
智恵子はわたくしに密着し、
わたくしの細胞に燐火を燃やし、
わたくしと戯れ、
わたくしをたたき、
わたくしを老いぼれの餌食にさせない。
(後略)



あの頃(「以後」より)

人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
(略)
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無類のわたくしは初めて自己の位置を知つた。




読んでいて一番恥ずかしいというか…
赤面してしまいそうになったのは「初版」にある『僕等』という詩。

智恵子への光太郎の想いが伝わってきて、
冒頭部分がなんだかとっても恥ずかしい…。

でもとてもいい詩だと思う。



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2014年12月10日| コメント:0トラックバック:0Edit
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